コメント
久々にサ道でもキャ道でもなく、濃厚な拉麺記事を読ませていただきました。
これほどの感涙な記事でも評価はぼちぼちなのも寂しい事かと。
涼しくなっても貴殿が川越に遊びに来ないので、久々にキャ道を楽しんでしまいました。
いいですね〜!純真無垢なつぼみ乙女と久々に飲み交わすひと時、いつの間にか楽しいルーレットで深酒に溺れてしまいました。こういう快楽を毎度続けていて羨ましいです。
虚無 Becky! | 2019年9月29日 01:50楽しく拝読させていただきました^^
確かに濃厚そうなスープで、割ってみたくなりますよね…
「鰹節記念日」&「味玉愛」…試してみたくなりました‼
ぴろリポ | 2019年9月29日 19:34ベキさん、都内はまだまだ暑いので少しお待ちを。ラーメンは、麺と同じくスープも重要なので今回の評価に関しては許しください。
のらのら | 2019年9月29日 20:28ぴろさん、お疲れ様です。私は個人店推しなのに、えらく感動する事が多かった店でした。このままの意思を、スタッフ全員が継承してくれるといいなと願う新店でした。
のらのら | 2019年9月29日 20:40

のらのら
ゆーぞー
井之頭イチロー
あかいら!
ken
FUMiRO





〝ニューオープン 探検記〟
自宅のベッドで目が覚めたのは実に十日ぶりになるだろうか。日々益々〝サウナ愛〟が加熱する毎日を送っているので、このままだと年間 300日を超えるサウナ生活となりそうだ。夜と朝に分けると 500回は軽く超えそうで、もはやサウナの本場であるフィンランド人の入泉回数を遥かに上回るのではないだろうか。
そんな怠惰な暮らしを送っている中で、在宅が必要な所用を午前中に済ませてから、新店めぐりの為に支度を整えた。本日の新店はRDBの新店情報に挙がってきたばかりのコチラで、自宅からもアクセスの良い場所なので初訪問を決めておいたのだ。お店情報によると、まさに本日オープンとなっているが、系列店を多く持つグループ店だけにオープン初日でもオペレーションに間違いはないと確信して自宅を午後1時過ぎに出発した。
山手線に乗ると5分もせずに最寄駅となっている代々木駅に着いた。東口を出て新宿方面へと進んで行くのだが、歩いている場所は新宿である。本当に代々木駅て降りたのが正解だったのか不審に思いながら高島屋の脇を抜けて進むと、以前から工事中だった場所に新たなオフィスビルが誕生していた。そのビルの下層エリアにオープンした飲食店街の一階に、華やかな開店祝いの花と大行列が並んだ一角を見つけた。呼び込みスタッフの大きな声に導かれるように店先までやって来ると、事前の食券購入を促されて店内に入った。
入口右手には最新式タッチパネル型券売機が設置されていて、つけ麺推しなのは十分に承知していたが頑なにマイスタンダードのラーメンを貫いた。不慣れな券売機の中でも、初めから味玉入りのメニューが設定されていたの表題を見つけて迷う事なく発券できた。食券を手に取り、パーテーションロープの張られた行列の最後尾を探して並んだ。人気アトラクションの行列のように往復を繰り返す並びは、近隣に同日オープンした飲食店とは比べ物にならない長さだ。やはりネームバリューの高さが、オープン初日の大行列を生み出したのだろう。
タカシマヤタイムズスクエアが開業する前の二十数年前、この辺りは貨物駅周辺の薄暗く近寄りがたい場所だった気がする。それが新宿高島屋のオープンから次第に明るくなってはきたが、それより南側の地域は最近まで、うら寂しい雰囲気が漂っていた。そんなエリアに新たに出来た飲食店街のおかげで、随分と明るくなったと感じる。東京五輪に伴って変わりゆく千駄ヶ谷界隈を目の当たりに感じながら並んでいると、思いのほか回転が早く20分程で行列の先頭にまで進んでいた。
食券の半券を行列の誘導係のスタッフに渡して、席が空くのを待つ間を利用して、紺色の暖簾越しに店頭を含めた観察を済ませておく。開店祝いの花を見ると名だたる有名ラーメン店の名前が並び、ラーメン業界の勢力図を思わせる。店頭から眺める店内の様子は、白木の木目調の客席とステンレス製の調理場が対照的で、ガラスで仕切られた完全独立型厨房となっている。明るい客席には目線を仕切る対面式カウンター席と、様々な客数に対応できそうなフレキシブルなテーブル席が多く設けてある。そんな客席には江戸と令和を融合させた浮世絵風の戯画が飾られてあったりと、外国人観光客にも人気となるのは間違いなさそうだ。
そんな店内観察をしていると最後尾に並んでから25分で、券売機近くのカウンターが空いて腰を下ろした、そこから更に細かく物色をすると、店内には新たな仕掛けが施してあるので驚いた。それは、つけ麺用のスープ割りがセルフで行えるシステムなのだ。これだけを聞くと当たり前のように思えるが、卓上ポットではなくファミレスのドリンクバーと同じ方式を採用してある。しかも〝煮干〟〝鰹節〟〝柚子〟と三種類ある出汁を、蛇口付きのスープウォーマーから注いで持ってくるという新しい試みが施されている。もちろんセルフなのでオリジナルブレンドも可能で、スープ割りの新たな未来が拓けたように感じた。これならばラーメン党の私でも、味の濃さを自分好みに調整しても良いのだろうか。明記はされてなかったが、つけ麺専用なのかも知れないので今回は自粛しようと初めから決めておいた。
私は川崎の本店を未訪なので詳しくは分からないが、東京駅のラーメンストリートにある系列店には訪問した事がある。そちらの店内にも常設されていた調理器機が、店の特徴を明確に表現している。その機械とは、ヤマキタ製の電動極薄鰹節削り機で、都内の三つ星和食店でも見かけるものだ。鰹節を削るという実務と、プレゼンテーション用に削り立ての鰹節が見えるようにスケルトン仕様となっている点が興味を惹く。この演出も 2020に向けて、更に高まるインバウンド需要には十分に効力を発揮するだろう。本日の客層こそ日本人しか見られなかったが、SNSをキッカケにして瞬く間に外国人観光客が押し寄せてくるだろう。余談の中の余談だが、本日の最高年齢記録は私と思われる程に若者が占めている。そんな店内を本日はオープン初日という事でホールスタッフが5人と調理スタッフが7,8人の大所帯でフル稼働している。さすがは新店舗オープンには慣れた幹部スタッフがいるようで、店内ばかりでなく行列までも見事にコントロールされている。卓上に置かれたお冷のグラスが温かかったのは残念だが、初日とは思えないくらい安定した作業工程を眺めていると、着席して間もなく我が杯が到着した。
その姿はプラスチック製の受け皿に乗せらせた、高台の高いオリジナルデザインの器の中から溢れんばかりの景色を見せる。口縁に描かれた雷紋柄が隠れるくらいに、なみなみとスープが湛えられているので繊細さよりも力強さを感じる姿だ。いつもならばスープを味わう為にレンゲを手に取るのだが、今回ばかりはレンゲではなく箸を手にした。
それは、このラーメンの象徴である具材を最初に味わう為である。それが液面で陽炎のように揺れている〝極薄削り節〟なのだ。提供時だとスープの湯気に侵されていない乾燥した鰹節が残っているので、まずはその部分を箸で迎えにいった。箸先が触れた感覚がないくらいに繊細な削り節は、およそ 0.01㎜ 程度と思われ市販の物とは比較にならない薄さだ。店内には大きく「とろける鰹節」と書かれているので、期待のハードルを最大限に上げて口に運んでみた。すると確かに口の中で、とろけて無くなった。舌の上に一切の感覚を与えずに、品のある旨みの痕跡だけを残して消えた。私の人生の中で新たな革命が起きた今日を〝鰹節記念日〟と名付ける事にした。それくらいに鰹節の概念が変わる衝撃的な出会いだった。以前、東京駅で食べた時も同じような削り節が添えてあったが、それとは全く厚みも香りも違っていた。何よりも違ったのは鮮度で、酸化しやすい鰹の削り節を劣化させない削りたてが伝わってきた。削ってから 30分が勝負と言われる削り節の持ち味を、見事に引き出している仕事には思わず感動してしまった。それは鹿児島県指宿 山川産の「一本釣鰹本枯節」の品質の良さや、ヤマキタ製の電動削り機の精度の高さだけでなく、作り手の思いがなければ生まれてこない削り節だと心から思った。
口の中が清らかな幸せで満ちた所で箸をレンゲに持ち替えて、深みのある栗皮茶色のスープをひとくち。すでに大半の削り節はスープに溶け出して表層を覆っているので、香味油のような油膜は見られない。そんな液面にレンゲを押し込んでみると、鰹節を主体とした魚介系出汁の香りが強さを増して立ち昇ってきた。見た目には多少のザラつきを感じながらレンゲを介してスープを口に含んでみると、魚介の旨味と共に強めのカエシの醤油感が主張してきた。懸念されたザラつきは、それ程ではないが塩気の高さが舌と喉を刺激する。ラーメンのスープ割りが可能ならば直ぐにでも薄めたいと思ったが、麺とのバランスを考慮された濃い味なのだろうと言い聞かせて麺へと移行した。
厨房内の手元が見られないので麺上げまでの時間は推測不能だったが、かなりの茹で時間と思われる平打ち太麺が現れた。持ち上げだ箸先には数本でも重さを感じる程の、男らしさのある自家製麺だ。それはまるで、うどんを思わせる太さと手揉みのように波を打った麺質がオリジナリティをアピールする。そんな麺をスープの飛び散りなど気にせずに躊躇なくすすり上げると、見た目通りに大胆な口当たりで襲いかかってきた。大胆なのは口当たりだけでなく、歯応えにも表れていて迫力のある弾力が持ち味のようだ。奥歯を跳ね返しながら噛み切った麺の断面を見ると、黄色みのある麺肌と同様に芯まで色付いている。それはスープの色素を吸ったのではなく、生麺の段階から黄色い麺だった事を想像させる。40㎝ はあるかと思う、長めに切り出しされた自家製麺なので、すすり甲斐は十分で滑らかな麺肌が手伝って心地よさは抜群だ。そこにピンポイントの茹で加減が生んだ歯切れの良さが加わった食べ応えには、スープの塩気を忘れてしまったくらいだった。
具材のチャーシューは豚バラがハーフロールの煮豚型で盛り付けてあり、脂身にも歯応えを残した柔らかすぎない仕上がりとなっている。その事が苦手な脂身の食感を軽減して、脂身の多い部位だったが不快な思いをせずに済んだ。また味付けも穏やかだったので、薬味の白ネギとの共演させてネギチャーシューとしても楽しめた。
不定格な大きさのメンマが大量に入っていて、あらゆる場面で食感のアクセントを与えてくれる。強気なスープな中では、箸休めとなってくれる薄味もありがたく終始に渡り脇役を演じてくれた。
唯一追加した味玉が、あまりにも素晴らしい仕上がりなのには驚いた。それは魔法でもかけられたような不思議な味玉となっていた。白身の表面には漬けダレの色素が染みているが、白身の内側には全く浸透していない。その事が浸透圧による白身の硬直を起こさずに、半熟卵の柔らかさを保ったままの状態でいる。それなのに黄身には中心部まで漬けダレが浸み込んでおり、浸透圧によって余分な水分の抜けた黄身は旨みが強くなっているので、黄身に注射針でも挿して漬けダレを注入したのではないかと勘ぐってしまう。そうでなければ、どんな魔法を使ってのだろうかと思ってしまうような味玉は、しっかりと提供直前に温め直されているので、大きな〝味玉愛〟にあふれている。
十字8切の小さな海苔は、強めの歯触りだが磯の香りが強く出ている。オープン直後なので鮮度が良いのは当たり前だが、海苔の目利きの良さも素晴らしい。
薬味の白ネギは青みの多い葉先の部分が、とても繊細かつ丁寧に刻まれていた。しっかりと水にさらされているのか香りは穏やかだが、シャキッとした食感を与えてくれる。先程のチャーシューとの共演では、助演女優賞に値する名演技を見せてくれた。
中盤からも自家製麺の牽引力に引っ張られて楽しんできたが、スープの塩気に関してはお手上げとなってしまいレンゲを置いた。もしラーメンでもスープ割りが許されるのならば、ぜひ煮干割りを試してみたいと思った。初期値の塩分濃度が 15% 低かったら、舌や喉を灼くような事もなかっただろうと、老いを感じ始めた自身の味覚を悔やんだ一杯でした。