なんとかデータベースラーメンカレーチャーハンぎょうざうどんそば
 

「特製醤油ラーメン ¥1200」@自家製麺ほんまの写真平日 晴天10:50 先待ち1名 後客1名

〝ニューオープン パトロール〟

またもや地方遠征をしている間に新店情報が飛び込んで来た。そこで本日はRDBを頼りに新店めぐりをしようと決めた。新たな情報では豊島エリアと練馬エリアでの情報なので連食するには打って付けの好条件だと思い、詳しい情報をRDBより引き出してみる。

本日の一軒目に選んだこちらは一週間ほど前にオープンしたようだ。お店情報によると営業時間は昼間の4時間だけのようで、ハードルは高いが備考欄には〝自家製麺〟と〝無化調〟いう強いこだわりが見られる。〝無化調〟は推進派なのだが〝自家製麺〟には全幅の信頼を寄せられないのが本音だ。やはり「餅は餅屋」という言葉があるように「麺は麺屋」に任せた方が良いのではと思ってしまうような自家製麺に当たる事が多い。今回はこの〝自家製麺〟がどちらに転ぶか楽しみに初訪問を決めた。

昨夜は巣鴨に前泊して恒例の夜のネオン街を楽しんだ後、ホテルに戻って午前2時にはベッドに入った。翌朝も快調に目が覚めると10時にチェックアウトして、11時開店前の現着を目指して巣鴨を後にした。最寄りの駒込駅までは山手線でとなり駅の至近距離なので歩いて向かった。

大通りを避けて脇道を入って行くと突然に鬱蒼とした緑の木々が現れた。赤レンガで囲まれた敷地は東京都の名勝である「六義園」のようで、初夏の風に揺らぐ木漏れ日を浴びながら先へと急いだ。六義園を過ぎると現在ではマンションが立ち並んでいるが、以前は大きなお屋敷があったであろう住宅街を進んで行くとアゼリア通りと名付けられた商店街が見えた。そこを背にして少し歩くと「自家製麺 ほんま」と書かれた白い看板が目に入ってきた。店の場所は分かりづらいが、遠くから見ても分かる看板の方へ向かって行くとシャッターに閉ざされた店先が見えた。

開店より50分も早く着いてしまったので、並びもなく先頭を確保できた。しかしシャッターは閉まっており〝毎週火曜定休日〟とだけ記させている。中の様子が見えないので臨時休業の不安がよぎるが、店の横のダクトからはスープの香りが漏れているのを確認すると一安心して店先を離れた。

住宅地のド真ん中で、たった一人で並んでいるのも不審に思い近くの田端銀座の豆腐屋さんで出来立ての豆乳を買って体調管理にも気を使ってみた。その後も入り組んだ町並みを40分ほど散策して店先に戻ると、一人の並びが出来ていたので二番手をキープした。

表から見てみると周辺の景色に溶け込んだ外観がひときわ目を惹く。黒の漆喰壁と瓦屋根の軒下が印象的で、天然木で作られた看板も高級感を醸し出す。そんな店頭で待っていると定刻になりシャッターが上げられ、真新しい白のれんが掛けられてオープンとなった。

店頭に置かれた券売機にてオススメが塩なのは知っていながらもマイスタンダードの醤油を特製にアップグレードして発券した。入口の扉のガラス越しに見える厳かな店内へと緊張感を押し殺しながら入ると、先着順に順不同でカウンターに腰を下ろした。カウンターと同じ無垢の一枚板で設えられた高台に食券を置いて店内を見渡す。

外観以上に高級感のあふれる店内は、無垢の白木のカウンターが見事に映える。所々に木の節目が見られるが、それも味わいとなっている。席間もゆったりとしたコの字にレイアウトされた贅沢な客席の造りとなっている。また独立して設計された奥の厨房も広く導線は大変そうだが、仕込みなどには効率が良さそうだ。山手線の内側でこれだけの平米数を確保するには持ち家でもない限り、物件探しや賃料の交渉面で大変だったろうと余計な心配をしてしまった。そんな広々とした店内を本日は二人体制で切り盛りしている。店主さんが調理工程の全てを担い、ホール業務や洗い物は女性パートさんが担当されている。

オープン間もない事もあってか、ワンロット一杯の丁寧な調理風景を眺めていると着席して8分で我が杯が到着した。その姿は白磁の受け皿に乗せられた口縁のシャープな切立丼の中で思い描いていたラーメンとは少し違った景色を見せていた。失礼ではあるが店構えの高級感からは想像出来ないような庶民的な盛り付けに見えた。しかし見た目や価格設定は評価の対象にしないと決めているので、イメージをリセットしてからレンゲを手にした。

まずは丁子色のスープをひとくち。卓上のウンチクを読んで想像していたのは清湯醤油系だったが、実際に目の前に現れたのは半濁スープの上に節粉のような浮遊物まで見られるものだった。液面の淵には煮干し由来の水泡も浮かんでいるので、勝手ながら魚介出汁が強めの醤油系と読んだ。そんな霞みがかったスープにレンゲを射し込んでみると、濃度や粘質を全く感じさせない抵抗力が伝わってきた。そこからは特徴的な香りは立ち昇っておらず静かな幕開けとなった。いざスープを口に運ぶと穏やかなイメージのままではあるが、かなりの高温が唇を刺激する。それ以外は口の中に溶け込むように入ってきたスープは、繊細ながらもしっかりと旨みを蓄えている。それは魚介の風味が香りを通じて脳を刺激しながらも、土台にはどっしりと築かれた丸鶏主体の動物系出汁が潜んでいる。決して香味油や鶏湯にコクを頼っていない組み合わせに、一瞬でスープの魅力に引き込まれてしまった。心配された節粉のザラつきもなく、カエシのエッジも丸みを帯びていて素晴らしいバランスで構成されている。複雑に仕込まれているのではあるのだろうが、シンプルに自然な旨みだけを味わえる他にはないスープに感動した。その思いのままに麺をいただいてみる。

自家製の中太ストレート麺は麺上げまでジャスト90秒。持ち上げた箸先からは全粒粉のフスマの粒がハッキリと見られるオリジナリティのある麺質だ。その箸先からは内麦ならではの小麦の香りが待ちきれずに溢れている。私もその風味に引き寄せられるように、麺を一気に啜りあげていた。すると麺肌に溶け始めたグルテンの甘みと、スープからの魚介出汁の香りと塩気が重なる事で新たな旨みが生まれていた。やはり初動では穏やかで優しい味わいのスープと思っていたが、旨みと香りに富んだ自家製麺にも引けを取らないという事がスープの旨みの豊富さを物語っているようだ。さらにはグルテンの詰まった腰の強さが予想以上の歯応えや歯切れを生んでいて、噛む楽しみを教えてくれる。おまけに喉越しまで素晴らしいとなれば、文句の付け所のない自家製麺に出会ってしまった。塩と醤油の兼用麺かどうかは分からないが、醤油スープとの相性は申し分なかった。さっきまで「麺は麺屋」と言っていた事を恥ずかしく思うほどの良麺だった。

具材のチャーシューは特製なので部位違いで二種類入っている。豚肩ロースと豚バラを用いているが、どちらにも言えるのは食材本来の旨みが強いという事だろう。ウンチクでは味付けを控えめにしているとなっていて、確かに醤油や塩での味付けは抑えてあるが香辛料の使い方や香りの付け方によって薄味ながらもボケてない味付けとなっている。そこに豚肉本来の旨みが加われば鬼に金棒である。少しだけ残念なのは時間をかけて丁寧に仕込まれた分、非常に柔らか仕上げなので肉々しい噛みごたえは味わえない事だった。もちろん好みの問題なので仕方ないが店主さんが仕込んだ広東式叉焼を食べてみたいと思ってしまった。

保守派の私の中で、過去にこの具材で高評価した事が無いに近いのが鶏つくねだ。細かい事を言うと〝鶏つくね〟ではなく〝鶏つみれ〟なのだ。出汁の中に「つまんで入れる」が語源の〝つみれ〟なので鶏つみれが正しいはずだが、この具材は過去のそれとは別次元の鶏つくねだった。まずは食感の良さが合わさった食材の持ち味を発揮していた。淡白になりがちな鶏ムネ肉に脂身のある鶏モモ肉を加えて挽き肉にする事で、軽やかながらもしっとりとした肉質を引き出している。そこに鶏ナンコツがアクセントとなって食感に個性を与えてくれる。また刺激の強い香味野菜に頼らずに味付けされているので、鶏肉本来の旨みを味わえる。しかしこれが簡単なようで、最高の鮮度でないと薄味に仕上げるのは難しい。また柔らかな食感からも分かるように、下茹でし過ぎて肉質が引き締まったり旨みが茹で汁に抜け出してない点にも注目すべきだと思う。

独自の〝味玉論〟とは方向性の違う味玉で、熟成度は低かったが、矢継ぎ早で仕込まれた即席味玉とは別物の、時間の経過だけが為し得る漬けダレの浸透は見事だった。それは均一に染まった白身が物語っていて、半日やそこらでは仕込む事の出来ない逸品であった。また提供温度の温かさにも店主さんの〝味玉愛〟を感じずにはいられなかった。

ここまでの高評価を残念ながら下げてしまったのが薬味陣だ。高級なブランド葱を使えばいいってものではないが、万能ねぎを添えるにしても蛇腹状につながった切り口の青ネギからは薬味へのこだわりは伝わってこない。ましてや青みの水菜からは切りっぱなしという手仕事感の無さばかりが目立って見える。ウンチクには季節に応じた野菜を使用と書いてあったので、今回の水菜が基本ではない事を願ってしまった。

そんな事を思いながらもスープと麺の圧倒的な美味さに引っ張られて、気が付けば無我夢中で完食完飲して器の底が見えていた。

やはり最終的にも、見た目や価格設定は考慮せずに高評価となるべきラーメンだった。もちろん他の方の評価には価格も含まれてくると思うので今後も賛否を問われる事になるとは思うが、これだけの食材で手間を惜しまずに命を捧げたラーメンならば決して高くないと私は思った。それだけに細部にまでこだわりを見せてくれるならば、より高価な設定となったとしても応援し続けたいと思わせてくれる一杯でした。

投稿(更新) | コメント (0) | このお店へのレビュー: 1件

コメント

まだコメントがありません。