なんとかデータベースラーメンカレーチャーハンぎょうざうどんそば
 

「生姜そば 中太手もみ麺 ¥850+味玉 ¥100」@麺 みつヰの写真平日 晴天 10:30 待ちなし 後待ち7名

〝新春うまいものめぐり〟

という事で昨年お世話になって美味しいと思った店だけを巡る贅沢な一週間を過ごそうと決めた。年末は矢継ぎ早に新店を巡ったので好みとは違うラーメンも胃袋に収めてきたので新年のご褒美も兼ねて好物のラーメンだけを食べたいと、昨年の思い出をたどる。

本日は台東区で美味しかった店に再訪問しようと決めた。昨年中に台東区内で訪れた店は9軒あるが、採点で美味しいと思う自己基準の85点を超える店は2軒しかない。そのうち大台の90点を超えた店はこちらだけだったので、本日は浅草駅近くのこちらを目指す。

数々の受賞歴を誇る人気店なので、11時開店前の現着を狙ってみる。アクセスは銀座線にて40分ほどだが乗換なしが有り難く午前9時半過ぎに家を出た。通勤ラッシュは落ち着いた渋谷駅だが、狭いホームには人が溢れている。日本最古の地下鉄である銀座線はホームの短さゆえに他の路線と比べても6両編成と車両数が少ない。その分、輸送力を上げるために運転間隔が短くピストン輸送のように乗客を送り出す。発車時はかなり満員の乗客も三越前を過ぎると一気に減り、最寄りである終点の浅草駅に着く頃には車両内に乗客は私ひとりだけだった。

改札を出て地上へ向かい、まだ観光客も少ない雷門を見ながら進み、浅草の華やかな雰囲気から抜け出すと路地にたたずむこちらがある。銀座線の浅草駅からは歩くと12分以上もかかったが考えてみると田原町駅からの方が随分と近かった。

開店30分前の現着なので、店先に並びもなく先頭にて待機開始。夏場の訪問は行列がエアコンの室外機の前なので熱風にさらされた事を思い出しながら、本日は気温3度の寒空の下で店頭のメニューにて品定めをする。

過去2回は醤油と塩を中太手もみ麺でいただいたので、今回もどちらかにして細麺に初挑戦しようかと思っていたが、メニューの中に生姜そばという文字を見つけた。待ち時間で冷え切った身体を温めるにはもってこいの生姜そばに一瞬で惹かれてしまった。

せまい路地から冬空を眺めていると、定刻より少し遅れてオープン。真っ白な暖簾をくぐり暖かい店内に入りカウンターに腰を下ろす。出汁の良い香りがする店内を本日もお二人で切り盛りされている。客層も浅草が近いが観光客というよりは、ご近所の方が多く見られる。

着席すると奥様がお冷やを持ってきて注文を受けてくれる。料金は先払いのデポジット式なので小銭でなくとも千円札くらいは用意しておいた方が良さそうだ。口頭でお題と味玉追加を告げた。麺の太さは最後まで悩んだが今回も手もみ麺にした。

カウンター全員分の注文を受け、準備が整ったところで調理開始。まずは自家製麺を麺箱のふたを利用して、手のひらで手揉みをする。微妙な力加減が繊細な作業に思われる。ワンロット2杯のオペレーションなので調理時間はかかるが丁寧な仕事なので待ち時間も、私は苦にならない。

そんな魂の吹き込まれた手もみ麺を茹で釜に入れるのだが、麺の対流を考えてか通常のテボの倍以上はある大きなテボの中に投入した。その間に器の中にカエシヤ生姜ダレを入れて、麺の茹で上がりを見計らってスープを注ぎ、テボから平ザルに移し、丁寧に麺を整えてから盛り付けていく。そんな姿に全幅の信頼が生まれて、期待は最高潮になる。

入店してから10分以上かかったが第1ロットで我が杯が到着した。最初にその姿に驚いたのはラーメンではなく器を見た時だった。まさかの前回と同じ器での提供だったからだ。何故それが分かったかと言うと丼の口縁に金継ぎがされていて、場所も大きさも寸分違わず同じだったので、それを確信した。割れたり欠けたりした器を大切に金継ぎまでしてつかっているラーメン店に今まで一度も出会った事が無い。器の値段や価値に関わらず、物を大切にする思いがラーメンにも表れると私は思っている。

そんな愛の溢れる白磁の高台丼の中の姿は、具材や薬味の何一つをとっても、ご主人の思いが宿っているように見えた。丁寧な盛り付けもあるが、薬味の切り方にまで思いがあるようだ。

まずは赤銅色のスープをひとくち。先行するのはタイトル通りの生姜の香りだが非常にトゲがなく穏やかだ。生姜の残り香の後には鶏ベースのふくよかなスープの旨みがどっしりと構えていて土台を築いている。その奥に更なる深みを感じるのは魚介出汁が効いているので複雑味があるのだろう。冷えた身体を温めてくれる生姜の成分は、出汁からではなく香味油に含まれているのだろうか、フレッシュな生姜というよりは落ち着いた印象だ。カエシの醤油ダレも控えめではあるが、生姜のインパクトに負けないように適度に主張している。そのおかげで生姜一辺倒なスープにならずバランスが保たれた飲み飽きしないスープになっている。

麺上げまで125秒ほどの麺を箸で持ち上げてみる。箸先からは麺肌の滑らかさが伝わってくる。平打ち麺なので横幅はあるが厚みは薄いので重量感はなく軽やかにすら感じる。厚みが無いので麺のエッジが刃物のように鋭いのがこちらの手もみ麺の特徴だ。その麺を口に運ぶと予想通りの滑らかな食感が唇から舌の上へと滑り込んでくる。いざ噛みつぶそうと歯を立てると、一本一本が違う個性を持った麺は口の中を飛び跳ねる。コシもあるが柔らかな食感は矛盾しているが確かに口の中に存在する。この躍動感のある麺を食べるだけでも来た甲斐があると思った。

具材は豚モモ焼豚が二枚と豚バラ焼豚が一枚。脂身のない豚モモ焼豚はロースト方式だと思うが旨みの含有量が桁違いで噛むたびに旨みが湧いてくる。それは赤身の肉質の良さはもちろんだが、中心部にまでしっかりと浸み込んだ下味が無ければ物足りなさが残るだろう。パサつきやすい豚モモ肉をこれほどまでにしっとりと仕上げるのは、調理技術の高さがなければ無理だろう。一方の豚バラ焼豚は煮豚型で適度な脂身の甘みを上手に引き出している。うす味なのに脂身がしつこくないのは、入念な下茹でと表面に施された炙りの効果だろう。焼豚自体はとろけるような柔らかさだが、炙られた表面がカリッとしているので食感と香味がプラスされている。

追加の味玉は塩気は抑えた、うす味ではあるが出汁の旨みが黄身にまで到達しているのであっさりしているが味わい深い。玉子自体もLサイズ以上の大玉を使っているので食べ応えも十分ある。じっくりと味わうも良し、箸休めとして味のリセットするも良しの名脇役。

名脇役といえば忘れてはならないのがレンコンだ。こちらの特徴の一つでもある短冊切りのレンコンは、通常の輪切りでは生まれてこない独特の繊維質の食感とが楽しめる。京風の煮物のような味付けも控え目でスープの邪魔をしない。極太メンマも入っているが食感はレンコンに任せてメンマは柔らかな繊維の食感を表現している。お互いに持ち味を発揮していて良いアクセントになっている。

薬味は多彩で、それぞれが役割を果たしている。その中でも特筆すべきは生の生姜だ。最初はスープに混ざらないように盛られているので分からなかったが、初動では落ち着いた生姜の香りのスープと思ったが、生の生姜がスープに加わる事でフレッシュな香りが厚みを持たせる。さらには生姜をすりおろすのではなく、細かく刻む事で噛んだ時の新鮮で爽快な辛味と食感の両方を演出している。

薬味の白ねぎの手の込みようもあっぱれで、見落としてしまいそうだが、切り方も仕込み方も三種類に分けてある。白髪ねぎと笹切りと小口切りだが、笹切りはそのままで小口切りの方は水にさらしてある。しかもそれぞれが意図通りの役目を果たす。白髪ねぎは食感を、そのままの笹切りは刺激を残した辛味を、さらしネギは辛さが抜けてスープの加熱により生まれた白ねぎの甘みを出している。それだけでは収まらず青ねぎまで添えて色彩にまで配慮してある薬味軍には恐れ入ってしまった。

そんな思いの詰まったラーメンを前に箸は止まる事なく完食していた。そして両手で丼を傾けてスープを飲み干す頃には冷えた身体も温まっていた。丼をお膳に置いて席を立とうとした時には、まだ第2ロットが完成する前だったのには自分のあまりの早食いに驚いた。

店を出るとさらに行列は続いているが回転率は決して良くないので寒空の下でも早く並んで良かったと思った。帰り道は生姜効果でポカポカになった身体と、大切に扱われている器との偶然の再会に心までも温かくなれた一杯でした。

投稿 | コメント (0) | このお店へのレビュー: 3件

コメント

まだコメントがありません。