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「棣鄂製蒸平麺 ドロツケ九号海老牛る」@拳ラーメンの写真某ブロガーさんが「革命」と表したこの店の今月の限定メニュー。何でも業界初だという蒸麺なるものが供されるのだという。しかしそれは、結論の一部を先取りしていえば、全てのつけ麺好きに一度は食して頂きたいような「問題作」だとも思えるものであった。






○ 入店

昼夜6杯ずつしか供せないとのことだから、開店15分前に到着し、珍しくシャッターした。
しかしGW明けだからなのか、開店までに6人以上が並ぶことはなかった。
ちなみにGW中は、開店前に20人近くが並んでいたこともあるそうな…。

注文した後は同行者と談笑しつつ、時折調理工程を「チラ見」する(集中力のない私は「ガン見」ができない)。
麺はあらかじめ蒸し篭に入れられており、そのまま湯を張った調理用のバット(vat)に投入され、
約10分間蒸される。
まるで飲茶だ。
しかも麺は白菜と茄子に包まれ、さらにサランラップを上から被せた状態で蒸される。
サランラップは香りや旨味を極力逃がさないとか、蒸しムラを減らすという効果があるのだろうか。
そして蒸し終わった後あるいは客に供する直前に、麺は調理用バサミで食べやすいサイズに切られる。
しかしまあ、なんとユニークな調理方法なのだろう。

1stロットであったため、注文したものが到着するまで約15分。
「まずは麺をそのまま味わってみて下さい」とのことだ。

○ 棣鄂製蒸平麺 ドロツケ九号海老牛る(+チャーシュー増量、煮玉子半個)

・麺、あるいは「生地」

篭の蓋を開けると、やはり飲茶に似た香り(蒸された「小麦モノ」の香り)と篭そのもの香りが漂う。
ブログで予習済みだったとはいえ、この香しさは素晴らしい。

また、今回ほぼ何も知らずにこの店を訪問した同行者は、目を丸くして驚いていた。
後で聞くと、麺がどこにあるのかわからなかったのだという。
それもそのはず。
この麺は厚みこそ1.5~2ミリ程度だが、横幅はなんと3センチ。
「線」というより「帯」であり、その「帯」とほぼ同サイズにカットされた白菜と茄子が、
麺と共にとぐろを巻いていたからだ。
ちなみにこのような形状であるのは、奇をてらったのではなく、通常の細く切られた麺だと
蒸しムラが多くなってしまうという問題を克服するためだそうだ。

香りばかりを楽しんでいるわけにもいかないので、まずは麺をつけ汁に浸けずに口に運ぶ。
麺だけで食すのと麺を野菜と共に食すのとの2パターン。
(…)どちらも美味い。

初めに気を引かれたのは食感。これまでにどこかで経験した食感だ。
ラーメンやつけ麺の麺ではない。…どこかの中華料理屋で食した蒸し餃子の皮(生地)だ。
いや。もちろん一口に蒸し餃子の皮といっても種々あるのだろうが、とにかく私がかつて
食したものを想起させるものがあったのである。
ピンと張り、それでいてしっとりもっちりとしたような舌触り・歯応えだ。

香りや食感につられてしまった部分もあるが、テイストのニュアンスもまた蒸し餃子の皮に
似てなくもない気がした。
が、少し似ているとはいえ、この全流紛入りの小麦の風味はそれを上回る。
ラーメンやつけ麺などの茹で麺に至っては、比較にさえならない。
共に蒸された野菜の旨味もまた、麺の上に良い具合に乗っている。
つけ麺ではなく飲茶の一種として分類しても良さそうだ。
しかしこの麺の自然な甘みと小麦感、どこかで…。
またもや至極個人的な話で恐縮だが、かつて食したどこかの有名なパン屋の全粒紛と天然酵母入りのパンだ。

蒸し餃子の皮に似た食感?蒸し餃子もしくは全粒紛と天然酵母入りパンに似てなくもないテイスト/フレーバー?
…怪しいな。
いつにも増して、汎通性や妥当性に不足しているような気がする。
まああくまで私の個人的経験と記憶に照合した表現及び比喩だということで、ご容赦いただきたい。
しかしまあ、ここまで述べた諸々の要素により、何というか麺という以上に「生地」といった趣だ。

・つけ汁

「ドロ」と冠されているだけあって、やはり濃厚なもの。
何が用いられているのか。
確定的なのは、魚介系も用いられて作られた塩ダレ、海老脂だけ。
動物系出汁に関して冒頭のブロガーさんは、牛骨の白湯だろうかと推測されている。
牛白湯のテイストを知らない私は「そうなのかも」と納得する一方、無知な故に、鶏か豚の白湯を
ベースに(こぶ志なら鶏かな)別のカタチで牛のテイストを加味していると言われても信じられる気もした。
ご主人が常連客らしき方に「牛スジの煮込んだものを云々」と話しておられるのが少し聞こえたのだが、
そこからもそう考え得るというか。

テイストはどうか。
僅かな「粒子感」を抱かせる動物系の旨味(牛のフレーバー+それと同種または別種の白湯味)と
優しくオイリーな海老のフレーバーが、2つの親和性こそやや気になるものの、それでも美味いといえる。
いや。美味いという以上に珍しい。または、新しい。
牛と海老のフレーバーの利かされ方が「中華」だと思わされた。
「これで○○の麺を食してみるとどうなるだろう」とばかりに、いくつかの店の麺のことも想像させられる。
また、濃厚な故、口中に含んだ際のテイストや香りの「押し」が強い一方で、飲み込んでからの
「引き」が早いのは見事だと思う。

・麺をつけ汁に浸して食す

ほとんど既に完成された麺である故、何かのタレか香辛料をごく少量散布するだけで良さそうだが、
そうもいかない。
というわけで、つけ汁に浸けてみる。
麺と蒸し野菜を分けずに浸けてみたり分けて浸けてみたり、そして半分しか浸けなかったり全部浸けたり。
実にバリエーション豊かだが、私が最も気に入ったのは、麺だけを全部浸けるパターンだった。
一口で三段階に渡る味変が賞味できるからである。
口にした瞬間から2~3回噛む序盤ではつけ汁の旨味が勝り、中盤では対等に、そして終盤では
麺が優勢になる。

① ・つけ汁の旨味   ② ・つけ汁の旨味  ③ ・(つけ汁の旨味)
  ・(麺の旨味)       ・麺の旨味        ・麺の旨味

とりわけ3段階目での麺の旨味や香りの増幅程度は、茹で麺ではまあ難しいだろうと思わされた。

・具

チャーシュー、煮玉子、白髪ネギ等。
昆布と塩で包まれ、長時間かけて低温調理されるのだという塩釜チャーシューは、紛れもなくこの店の「売り」。
しっとりとした旨味が広がる絶品であり、ラーメン屋で供されるチャーシューとしては規格外の
旨さを誇るのではないだろうか。
このつけ麺の中にあっても、流石にレギュラーメニューで食す際よりも存在感は薄れれど、
色褪せることはない。
そのまま食すのも、(せっかくの「レア」が熱のせいで変色しない程度に)つけ汁に浸けて食すのも良し。
あるいはチャーシューの下にある白髪ネギを挟んで食すのも良し。

・スープ割

スープ割はやっていないそうな。ちょっと残念。

○問題提起!!…をされた感

とても美味しくいただけたこの限定メニュー。
しかし、「では美味いつけ麺だったのか?」と問われれば、何とも答え難いものがある。
「美味しかった。でも…、『つけ麺』?」という具合に、問いの立て方自体に疑問を抱いてしまう。
というか、食中にずっと得もいわれぬ不足感もしくは欠落感を抱いていた。
何かが足りない。何かが欠けている。…何だろう。
そのモヤモヤした感じは、勘定を済ませて退店する時点でようやく鮮明さを帯びた(遅い)。
「今日は麺を啜っていない!!」

そうだ。そうなのだ。
横幅が3cmもある平打ち麺は啜るものではなく、パクパクと食すものであった。
その他、「麺」の項目で述べた諸々の要素も合わさって、私にとってこのメニューの麺は
麺という以上に「生地」だったのである。
だから美味いつけ麺というよりも、「美味い創作中華」という方が合点がいく。

もちろん一口に麺といっても、何も啜るものばかりではない。
たとえばパスタならば、わざわざペンネを啜って食す人は稀であろう。
たとえば中国ならば、小麦粉を用いた粉料理全般(たとえば餃子)を「麺」「麺料理」というそうな。
さらに、私も麺を啜るという行為にそれほど固執する方ではない。
たとえば紫蔵の短い麺とて気にならないというか、短いことを不満点として挙げられる方々を
見かけると、「そんなにも啜りたいんだ。皆さんも好きね~」と妙に客観視してしまうぐらいだ。

でも今回のように、つけ麺において全く啜る必要のない麺を食すのは、少なくとも私は初めてであった。
それに加え、既知の別の食べ物に似ていたとはいえ、やはりつけ麺の麺としては斬新なテイストと噛み応え。
新しさも「トリプルパンチ」となると、さすがに新し過ぎてすぐには順応できなかったのである。

もっとも、もともとこういう幅3cmもある麺を「それもまた麺の一種」だとして世間一般で日常的に
食されていれば、私だってとっくに慣れ親しんでいたかもしれない。
あるいはあと2、3度同じようなタイプのつけ麺を食せば、これに順応できるかもしれない(ちょっと自信アリ)。
しかし今回は、この麺が「啜らせない麺」であることが、私のみならず他にも気になる人が
いるだろうと思わされた。

麺とは一体何なのか。
もしくは、ラーメンやつけ麺における麺とは何か。
そんな問題を提起されたような気がしている。

○ 退店

幅3cmの麺を麺を始め、とにかくセンセーショナルな「問題作」であったこのつけ麺。
府の内外を問わず、つけ麺好き(もしくはつけ麺「も」好きな方々には少なくとも一度は
召し上がっていただきたい。
無理をしてでも食していただきたい。
あなたがどのように反応するのかを試すリトマス試験紙のような一杯となるだろう。
1日12杯、昼夜6杯ずつである。

投稿 | コメント (5) | このお店へのレビュー: 3件

コメント

こんばんわ、タイガー道場です。
えらいことになりました。「らーめんなかにし」が来月から昼のみの営業になるそうです。
それによって夜限定の「鶏塩つけ麺」が今月一杯で終了になるそうです。
店の立地条件が良くないといえ
これほどの店に客が入らないとは・・・
左京区のレベル高過ぎです。
うちの地元だったら絶対に流行るレベルなのに・・・
これは近いうちに来訪しなければならないです。
それはまた

こんにちは。

なんだかすごいものを見させていただきました。
つけ麺の新しいスタイル?
蒸し餃子のモチモチ感・・・好きなんですよねえ。
果たしてどんな「つけ麺」に仕上がっているのか。
非常に興味ありです。

uraWAのわ! | 2009年5月13日 11:52

urawaのわ!さん コメント等ありがとうございます

>なんだかすごいものを見させていただきました。
つけ麺の新しいスタイル?

新し過ぎますよ、全く…。
月末までにもう一度リベンジに行きます。
ちなみにこのつけ麺は仕込みにも調理にも手間隙がかかるので、もしレギュラー化するとすれば、
その専門店になるしかないそうです。

>果たしてどんな「つけ麺」に仕上がっているのか。
非常に興味ありです。

urawaのわ!さんのような百戦錬磨の方にこそ召し上がって頂きたい一杯でした。

ではでは

poly-hetero | 2009年5月13日 23:35

 遅コメ失礼致します。昼専です。因みにさっき東京から帰って来ました。
( ̄ー+ ̄)やはり行かれましたね!。きっと来ると思ってましたよ!
因みに私は「旨そうや・・・けどなぁ・・どう見ても麺がなー・・・。」と云う感じで、
「新種の食い物」に疑心暗鬼なる子猫ちゃんな気分でした。(笑)

>、「そんなにも啜りたいんだ。皆さんも好きね~」と妙に客観視してしまうぐらいだ。
~その皆さんの一員の私です。(笑)で、これを頂いた時のあくもでも予想なんですけど、
>何かが足りない。何かが欠けている。…何だろう。・・・「今日は麺を啜っていない!!」
~になると思うんですね。間違いなく。
 この日曜日にインスタントのスープは割りと本格派な「ケンミンのビーフン」を食べたんですよ。
 そう、麺はビーフンながら、ツルツルとして超多加水麺の様でいた。そして満足!(笑)
 ラーメンの麺でなくても嬉しいんですよね。要は「スルスル啜り上げ」と「お口でモジャモジャ」感があれば
 どうやら嬉しい様なんですよ。

 やっぱり予想ですけど、リトマス試験の結果、
「凄いな・・・これ。面白いし味もエエぞ・・・だけど・・何か・・・足れへんな・・・」と
成る筈です。(笑)で、この一杯の創作点数がかなり高くも、満足の部分が心配となりそう。しかし、これも「麺」・・・。
 
 何ともこの「こぶ志」って店は「ドロ系」以外にも凄い物を作る店ですね!
 
 

昼飯専門 | 2009年5月14日 19:09

昼飯専門さん コメント等ありがとうございます

>因みにさっき東京から帰って来ました。

お帰りなさい、です。「お土産レビュー」、期待しております。
でも読んじゃうと身をよじるほど東京に行きたくなりそうなので、読まないですけどね~。
う、羨ましくなんかないですよ…。

>( ̄ー+ ̄)やはり行かれましたね!。きっと来ると思ってましたよ!

普段から読ませてもらっている2人のブロガーさんが激賞しているとなると、さすがにね~。

>~その皆さんの一員の私です。(笑)

ええ。存じ上げておりますとも。
私としては、カトちゃんの「あんたも好きね~」ぐらいの気持ちでの「皆さんも好きね~」です。
あの短さでも啜れることは啜れるので、他の麺にはない、瞬時に啜り切れるという面白みがあると思って
楽しんで(味わって)おります。

>ラーメンの麺でなくても嬉しいんですよね。要は「スルスル啜り上げ」と「お口でモジャモジャ」感があれば
 どうやら嬉しい様なんですよ。

奇しくも同じ日曜日、私も全く同じことで満足しました。
お土産として頂いた「オリーブそうめん」なるものを食したのですが、多加水プルルン細縮れが妙に
心地良かったのです。

>「凄いな・・・これ。面白いし味もエエぞ・・・だけど・・何か・・・足れへんな・・・」と
成る筈です。(笑)で、この一杯の創作点数がかなり高くも、満足の部分が心配となりそう。しかし、これも「麺」・・・。
 
そうなんですよね、全く。
しかし私はpoly-hetero。
味わうという行為の柔軟性とその提示に関しては、やすやすと誰かに負けるわけにはいきません。
ですからいつまでも「啜れないせいで麺に不満」とし続けるのではなく、
「啜れないという程度の理由で麺に不満を抱いた自分自身に疑問」としなければなりません。

と、いうわけで月末リベンジを狙っています。
でもその前に、「大阪つけ麺ツアー」が待っていそうですけど。

では、これにて

poly-hetero | 2009年5月15日 00:14