昔、「千の顔を持つ男」という映画があった。プロレス好きならミルマスカラスを思い浮かべるかもしれない。さしずめここの店主・阪田さんは「千のレシピを持つ男」と言ってもいい。料理オタクの食材マニア。
東川口で“鶏白湯”という言葉がまだ定着する前から「鶏白湯ラーメン」を出し、つけ麺ではスープ割りに付加価値を付けて「鶏蛋湯(チータンタン)」として提供したり、独立して「麺や七彩」をオープンすると七種類の冷やしを提供したかと思えば、東京駅進出。そして八丁堀に移転したら、目の前で粉から麺を作る異業(偉業)を成し遂げ、この神保町ではスイーツ(今川焼きみたいなきらく焼)を始めたり。
とにかく次から次へと新しいことを始めるのでなかなか付いて行けない。ここ、「きらく」でも新メニューが続々出てきて、頻繁に行けるわけではないので、どのタイミングで行ったらいいのか、迷っているうちに目当てのメニューが無くなってしまったり、変わったり。
なんとなく“今だ”と思って来てみた。「GIN(神)保町中華そば」と「カレー焼きそば」だ。ちょっと前に「ツキノワグマの中華そば」というのも出していて、それは完売して終了。しかし、また入荷できそうなので再発予定だとか。ジビエがあまり得意ではない私は、スルーしてしまった歴史に残りそうなメニュー。とにかく“キッチン”と名付けたのが、ようやくわかりかけてきた。ラーメン屋さん、という枠には収まらない業態。
前置きが長くなったが、食べた二品の説明をするとまたさらに長くなるのでご容赦を。
まずは「GIN(神)保町中華そば」2000円。
神保町と言えば本の街。書泉グランデ、三省堂書店、東京堂書店の3書店が協力し、北海道の馬追蒸溜所と共同開発したオリジナルジン「神保町 GIN “SHOT STORY”が限定で発売されている。1本4,180円だから、なかなかの代物。それをラーメンに取り入れてしまったのだ。お酒の入ったラーメンは過去にもいくつかあったが、これはなんだか違う。実は、限定でハーフかつ300円があったので、それも頼んでみた。しかし、スープを一口飲んで、「ここに入れちゃダメだ」と思い、ラーメンに集中。具は、ベルガモット、白髪ネギ、香椿(チャンチン)、ジュニパーベリー。「GIN」を最大限に活かしつつ、ラーメンらしく仕上げてある。稲庭中華麺がまた合う合う。神保町オリジナルジンの原材料を見るとジュニパーベリー、ヒバ、ラベンダー、キャラウェイ、グレープフルーツ、クミン、ミントなどが使われており、これらの存在を消すことなく、しかもラーメンのスープとして成立させている。麺を食べ終えて、ようやくとんかつを食べる。そしてスープを飲む。ん?なんだこれは。かつをつまみにお酒を飲んでる感じだ。スープも冷めてくると表情を変え、別の味わいが顔を出してくる。なんだか新しいラーメンの食べ方。というか、新しいジャンルのラーメン!?オリジナルジン自体が限定発売なので、このメニューが無くなる前に食べておくことをオススメ。もちろんアルコール入りなのでご注意を。
次に「カレー焼きそば」。ビジュアルを見て、食べたい!と思った。宮津カレー焼きそばだという。不勉強ながら「宮津ってどこ?」と調べてしまった。そんなことだから「宮津カレー焼きそば」自体を食べたことが無い。ご当地ラーメンなら全国いろいろ食べ廻ったが、ラーメン以外のご当地飯は残念ながら疎い。
70年くらいの歴史があり、宮津では10店舗以上で提供されているご当地麺。メニューのあとに「ウエット」と入っているのがわからなかったが、スープなしの“ドライ”と少しスープカレーっぽい感じなのが“ウエット”。5段階に分かれていてお店によって、“汁”の度合いが変わってくる。これはカレー中華そばの皿バージョン風。野菜や麺を炒めてあるので「焼きそば」という名称になっているが「皿カレーラーメン」として売り出したら、また拡がり具合は違ったのではなかろうか。
それにしても稲庭中華麺は万能である。ラーメンはもちろん、つけ麺、まぜそば、焼きそば、何にでも合う。ん?ちょっと待てよ、何にでも合うのではなく、稲庭中華麺ありきで、それに合わせたスープ作りや味作りを阪田さんがやってるのかな?狭い厨房でよくこれだけいろんなメニューを作れるものだ。たまたま同席だった知り合いは「近くなのでほぼ全メニュー制覇しています」と羨ましいことを言っていた。「神保町でしたか」と言うと「いえ、四谷なんです」って、近くないやん(笑)。私よりは近いけど。
とにかく新メニューには目を光らせていないと“画期的なメニュー”を食べ逃してしまいかねないのでみなさんも注目です!
ふぅ〜長くてすみません。いちメニューに情報ありすぎです(笑)。















